世界を救うヘンプ・プラスチック

世界を救うヘンプ・プラスチック

プラスチックは世界で最も適応性の高い素材です。加工しやすく、自転車から食品のラップ、ジェット機から鉛筆まで、プラスチックを使って何でも作ることが出来ます。

最初の人工プラスチック「ベークライト」- は1907年に開発されましたが、世界的なプラスチック生産の急速な成長は1950年代まで実現しませんでした。その後の65年間で、プラスチックの年間生産量は200倍以上膨らみ2015年に3億8100万トンに及びました。これは、世界人口の3分の2の人間の質量にほぼ相当します。

プラスチックには無限の用途がありますが、それゆえ地球に壊滅的な影響を与えています。現在生産されているプラスチックのほとんどは、大気中に有害なガスを放出する石油系化合物を原料としています。

廃棄物の処理は非効率的で、有害な副産物は大気、大地、海洋、生物にとって有毒です。しかし、温室効果に寄与せず、持続可能で生分解性があり、現在の技術と見分けがつかないほどのコストをかけずに済む代替案があるという事をご存知でしたか?

今日はその代替案であるヘンププラスチックについて調べてみました。

Hemp Plastic

ヘンププラスチックは、大気中の二酸化炭素を酸素に変換してくれる量が他の植物の4倍にもなるヘンプ植物から生産された、自然界で唯一100%生分解性のあるプラスチックです。生分解性プラスチックとは自然界において微生物が関与して環境に悪影響を与えない低分子化合物に分解されるプラスチックを指します。


ちょっとした歴史


歴史的に見ると、日本でもヘンプは何千年も前から、衣類から紙、建築資材に至るまで、様々な用品を作るために利用されてきました。丈夫な繊維質の植物は、様々な製品を作る上で非常に貴重なものであったため、アメリカ文化の初期には主食作物として使われており、初代大統領のジョージ・ワシントンもヘンプ農場を営んでいました。
1937年にアメリカで大麻税法が可決され、1970年にはさらに規制の厳しい規制物質法が制定されたため、アメリカで麻を栽培することは非常に難しくなりました。
2018年12月には農業改善法が成立し、麻は規制物質のリストから除外されました。ヘンプベースの製品を栽培して加工することが容易になった今、ヘンププラスチックが市場に出てくる兆しが見えています。

なぜヘンプなのか?


ヘンプはサティバ種の大麻の一種で、産業用として使用されています。工業用ヘンプは、マリファナの精神活性化合物であるTHCを0.3%未満しか含まないため、欧州連合(EU)のすべての国でも栽培が合法となっています。
種から花まで、ヘンプのあらゆる部分は利用価値があり、ヘンプの最も重要な側面は、その汎用性です。ヘンプは多目的作物であり、あらゆる部分を様々な方法で利用することができます。

例えば、繊維は一般的に軽量紙、断熱材、バイオコンポジットの生産に使用されています。ヘンプシブ-茎の木質の内核-は、建築物に使用されています。ヘンプシードは非常に栄養価が高く、生で食べたり、ヘンプシードオイルを搾ったりすることができます。


ヘンププラスチックは今でこそ人気があるかもしれませんが、その歴史はプラスチックのそれとほぼ同じくらい長いのです。自動車ブランド「フォード」の創始者ヘンリー・フォードは、ヘンププラスチックの品質に感銘を受け、1941年には様々な部品にヘンププラスチックを使用した車を設計しました。

ヘンプは栽培が容易で、セルロースの含有率が高く(最大70%)、そのため、ヨーロッパの消費者の間では、ヘンププラスチックの需要が高まっています。
現在、ヨーロッパの消費者は常により持続可能な(SDG`s)商品を求めているため、ヨーロッパでのバイオプラスチックの生産は増加傾向にあります。世界のバイオプラスチック生産量の約5分の1がヨーロッパにあり、バイオプラスチック産業全体の主要ハブになりつつあります。
また、最近のプラスチック産業の発展により、オーストラリアではヘンプストーンと呼ばれるヘンププラスチック樹脂が製造されるようになりました。ヘンプストーンは、スピーカーや楽器、家具などの製造に使用されています。ヘンプストーンは、様々な形状に彫刻することができ、用途は想像力次第です。

ヘンププラスチックの利点

・生分解性
石油系プラスチックの問題点の一つは、非常に長持ちであることです。プラスチックのごく一部だけが実際にリサイクルされるので、それのほとんどは埋め立て地行きです。
一般的なプラスチックは分解されるのに何千年もかかと言われていますが、正確な年数はありません。さらに悪いことに、プラスチックの分解の過程の副産物は環境に有害である可能性があります。

一方、ヘンププラスチックには完全な生分解性があります。ヘンププラスチックが分解されるまでに約6ヶ月かかりますが、その副産物は環境に有害なものはありません。条件が整っていれば、2~3ヶ月で跡形もなくなります。
そのため、ヘンププラスチックをリサイクルしなくても、ヘンププラスチックは分解され、埋め立て地にゴミの山を作ったり、海にプラスチックの島を作る事はありません。

・ヘンププラスチックには有害性がありません
ヘンププラスチックは、石油系プラスチックとは異なり、毒性はありません。
従来のプラスチックには、ビスフェノールA、ポリ臭化ジフェニルエーテル、フタル酸エステルと呼ばれる物質が含まれています。これらの物質は、人間や動物の内分泌系を阻害し、先天性欠損症や学習障害などの原因となります。

・ヘンププラスチックは強くて多用途
麻から作られたプラスチックは、石油系プラスチックの代表格であるポリプロピレンの3.5倍の強度があり、軽量であることも特徴です。大手製造業の中には、玩具、電子機器、自動車部品などの製造にヘンププラスチックを利用しているところもあります。

・環境への貢献
ヘンプは、土壌侵食を防ぐことで水質汚染を減らし、土壌の質を維持するなど、様々な面で環境に有益です。また、環境から二酸化炭素を他の植物以上に吸収し、温室効果を軽減します。

最後に


ヘンププラスチックは明らかに従来のプラスチックの驚くべき代替品です。麻から作られたプラスチックは、強く、耐久性があり、軽量なので、多くの産業で有用であることが証明されるでしょう。将来的には生分解性プラスチックが重要な役割を果たすと考えられています。
また、利用可能な石油源が減少していることからプラスチックを作るための代替手段の必要性も高まっています。いずれにしても、世界各国は石油化学の利用を減らすべきであることを内心では理解しており、麻はこれらのプラスチックとは対照的で合理的な選択肢の一つとして認識されるはずです。

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